Column コラム

「近くにSTがいない」だけで支援が届かない——地域格差という現実

子どもの困りごとの重さとは関係なく、住んでいる場所によって支援にたどり着ける確率が変わってしまっている。これが、日本の小児支援が抱える地域格差の実態です。この格差は個々のSTの努力だけでは変えられない構造から生まれています。支援の届け方そのものを見直す視点についてお伝えします。

1. はじめに

同じように「うちの子には支援が必要かもしれない」と感じた保護者がいたとしても、住んでいる場所によって、その後にたどり着ける支援には大きな差があります。「そもそも近くに小児を診られるSTがいない」という理由だけで、支援そのものにたどり着けないご家庭は、決して珍しくありません。同じ言語聴覚士として臨床にあたっていても、自分の勤務地の外側にあるこうした現実には、意外と目が向きにくいものです。今回は、この「地域格差」という現実について、あらためて考えてみたいと思います。

2. 支援の有無が、住む場所で決まってしまう現実

小児領域で働くSTは全国に約4,600人とされていますが、現場の肌感としては、それ以上に少なく感じている先生も多いのではないでしょうか。事業所や施設にSTが1人でも在籍していれば良いほうで、地域によっては、それすら珍しいというのが実情です。その結果、支援を受けたいと思っても、実際には受けられないまま過ごしている子どもたちがいます。困りごとに気づき、専門家に相談したいと思っても、通える範囲に小児STがいなければ、その思いは行き場を失ってしまいます。近くに専門家がいなければ、選択肢は「遠方まで通う」か「支援を諦める」かの二択に近くなってしまいます。長時間かけて通院する負担に耐えられず、結果として支援そのものを諦めてしまうご家庭があることも、現場では決して珍しい話ではないはずです。つまり、子ども自身の困りごとの重さとは関係なく、住んでいる場所によって支援にたどり着ける確率が変わってしまっているのです。

3. この格差が、STの偏在という構造から生まれていること

地域格差の背景には、小児STの数そのものが少ないことに加えて、その少ない人数が特定の地域や施設に偏って存在しているという問題があります。小児STとして経験を積める職場自体が限られているため、経験を積める場所に先生が集まりやすく、結果としてその他の地域では専門家が不足したままになるという構造になっています。この構造は、地方で働く個々のSTの努力だけで変えられるものではありません。一人の先生がどれだけ熱心に地域の子どもたちに向き合おうとしても、対応できる人数にも移動できる範囲にも限界があるためです。

4. まとめ

支援の有無が住んでいる場所によって左右されてしまう現状は、子ども自身にはどうにもできない不公平です。この格差は、STの偏在という構造から生まれている以上、個々の先生の頑張りだけでなく、支援の届け方そのものを見直す視点が必要になります。ウォルトのことばアカデミーがオンラインという形にこだわっているのも、この地理的な制約そのものを外すためです。先生がどこで働いているかにかかわらず、画面の向こうにいる子どもに支援を届けられる——その仕組みに関心のある方は、ウォルトのことばアカデミー トレーナー募集ページをご覧ください。